教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
千葉大学大学院専門法務研究科(法科大学院。以下「本研究科」という。)は、常に生活者の視点を忘れない「心」ある法律家を養成するという理念に基づいて、以下のような教育課程編成の考え方を基礎にした、学修内容および学修方法、学修成果の到達目標、学修成果の評価方法を採用し、教育課程を実施します。
1.教育課程編成の考え方
① 自由・自立の精神を堅持するために 「理論と実務の架橋」を重視し、高い学問的水準において法曹養成のための教育課程を編成し、提供するとともに、法曹の専門領域における職業的倫理を涵養するための教育課程を編成し、提供します。
② 地球規模的な視点からの社会とのかかわりあいを持つために 「理論と実務の架橋」を重視し、グローバルな視点や地域の視点から社会の持続的かつ包摂的発展に寄与しうる高度で専門的な知識と実務能力を修得させる教育課程を編成し、提供します。
③ 専門的な知識・技術・技能を修得するために 高度な専門性を必要とする職業を担うための法的知識の修得と能力育成ができる教育を提供します。
④ 高い問題解決能力を育成するために 専門職チームに参加し、専門的な問題解決能力を涵養する教育の機会を提供します。
⑤ 上記の「理論と実務の架橋」の観点から、法曹となる者に必要となる専門的学識とその応用能力を確立し、それを前提とした実務の基礎的素養、弁論能力等を涵養する教育課程を編成します。また、授業方法としては、上記の理念を実現するための基礎的能力の確立をはじめとして、段階的かつ体系的に教育を実施する課程を編成します。さらに、かかる応用能力のうち、上記の「高い問題解決能力」の一要素である、論述能力の涵養を図る学習の機会を提供します。これらを通じて、法曹としての実務に必要な専門的な法知識と技能、思考⼒・分析⼒・表現⼒等の能力の修得を完結させることを⽬指します。
2.学修内容および学修方法
本研究科における授業科目は、各年次の到達目標に即した授業を行います。その具体的な学修内容および学修方法について、法律基本科目とそれ以外の科目(法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目および展開・先端科目)に分けて述べると、以下のとおりです。
① 法律基本科目のうち、1年次の授業科目としては、憲法・民法・刑法の必修科目を中心にしながら、商法・行政法・民事訴訟法・刑事訴訟法の選択必修科目などを配置します。これらの授業科目においては、実定法の基本構造の理解を図るために、各分野の基本概念や基本的な判例などを取り上げることを通じて、教科書や基本的な判例を単独で読みこなす能力を養う授業を行います。その際、法学を学修してこなかった入学者に対しても、着実に学修できるように配慮し、本研究科の開放性と多様性の確保に努めます。
2年次の法律基本科目としては、上記の7分野すべてについて、必修の授業科目を配置します。これらの授業科目においては、比較的単純な事案への法適用能力を養うために、判例を幅広く取り上げ、それに関連した事例に当てはめられようにすることを目標とした授業を行います。これらの授業科目の多くは、インテンシブ科目として、1学年を2クラスに分けて密度の濃い授業を行い、とりわけこれらの授業科目において、基本を重視した指導を徹底して行います。
3年次の法律基本科目としては、上記の7分野の一部を必修科目として配置するほか、演習科目等の自由選択科目を配置するという方針をとっています。これらの授業科目においては、判例の深い理解をもとに、より応用的な場面、または、より広い分野における法適用能力を養うための授業を行うとともに、事実抽出能力と文章化能力の向上を図ります。
② 法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目および展開・先端科目においては、上記の授業科目を基礎にした授業、または、上記の授業科目に関する問題関心を高める内容等を有する授業を行います。
このうち、法律実務基礎科目は、法曹の専門領域における職業的倫理その他の法律実務に関する基礎的な素養・技能・能力を修得することを目的とするものです。具体的には、必修科目である2年次の「民事実務基礎1」および「刑事実務基礎」、同じく3年次の「法曹倫理」などを開設し、理論と実務の架橋のあり方のひとつを提供するとともに、実務的な観点から文書作成を指導します。あわせて実務的な観点から、コミュニケーション能力(弁論能力を含む)の向上を図る授業を行います。とりわけ、3年次の必修科目である「刑事模擬裁判」および「エクスターンシップ」において、法曹実務における協調性やチームの視点の重要性を踏まえて、こうした能力の向上を図ります。
他方、展開・先端科目は、グローバルな視点や地域の視点を踏まえた応用的・先端的な法領域等について、関連科目の学修成果を展開・発展させ、市民生活を支える法曹の養成という本研究科の目的に即した教育を行います。また、これらの授業科目は、2年次・3年次に配置され、将来の希望進路に合わせた選択が可能になるように、すべて選択必修科目にします。
さらに、1~3年次を通じて基礎法学・隣接科目を配置し、法に関する理解の視野を拡げられる内容の授業科目を、各自の履修計画に応じて履修できるように配慮します。
③ 専門的学識の応用能力としての論述能力については、とりわけ法律基本科目の応用科目、これらの科目と実務科目の融合科目として位置づけられる法律実務基礎科目、および展開先端科目のうち司法試験の選択科目に対応する授業科目において、それぞれの分野に関する論述能力の涵養を図ります。
3.学修成果の到達目標
本研究科における各年次の到達目標は、次のとおりです。すなわち、1年次においては、実定法の基本構造を理解し、教科書等を単独で読みこなす能力を有していることです。2年次においては、比較的単純な事案への法適用能力を有していることです。3年次においては、より広い分野における法適用能力に加えて、コミュニケーション、事実抽出および文章化の能力を有していることです。総じて、法曹として当然に要求される基礎的能力を、その前提となる知識・技能とともに着実に修得することが、各年次の到達目標になります。
なお、本研究科では、進級バリア制を採用します。1年次終了時には、1年次に履修すべき必修科目のうち未修得科目の数、および共通到達度確認試験の結果が一定の水準を越えているか否かを考慮して、進級判定を行います。また、2年次終了時には、1年次に履修すべき必修科目のうち未修得科目の有無、および2年次に履修すべき必修科目のうち未修得科目の数を考慮して、進級判定を行います。
4.学修成果の評価方法
学修成果の厳格な評価のために、法曹養成のための中核的な教育機関たる法科大学院として、司法試験法および法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律が定める法曹養成の基本理念の実現を目指すべく、学年ごとに設定され一般公表される到達目標、および授業科目ごとに設定され事前にシラバスで公表される当該科目のねらい(目標)に照らし、その到達度を厳格かつ適正に測定することで成績評価を行います。
具体的には、以下のような手法を用いて、当該各科目のねらい(目標)の到達度を厳格かつ適正に測定します。
① 必修の法律基本科目については、原則として平常点・中間試験・期末試験によります。
② その他の授業科目については、原則として平常点・期末試験によります。ただし、科目の特性により、期末試験に代えたレポート、リサーチ・ペーパー、起案文書などによる場合があります。
これらに基づいて授業担当教員から提出された評価結果をもとに、本研究科の教授会において審議を行い、厳格かつ適正な成績評価を実施します。
さらに、上記の成績評価の方法を確保するために、授業科目ごとに採点基準、成績分布等を学生に開示し、授業科目の担当教員が成績評価に関する学生の照会に応ずるほか、成績評価に対する不服申立ての仕組みを設けます。これらによって、成績評価の公平性と透明性を確保します。
5.カリキュラムの改善
本研究科では、研究科長を中心に、その教育目標をよりよく達成できるよう、ファカルティ・ディベロップメント(FD)のための会議として、本研究科の専任教員等を構成員とする教育方法研究会などを開催し、各授業科目の履修状況、成績評価などとともにした討議を行うことを通じて、カリキュラムの成果などを定期的に検証し、必要な見直しを行うこととしています。