研究科概要
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研究科長メッセージ

生きている一人ひとりのために

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研究科長
北村 賢哲
(民事訴訟法担当)
    千葉大学大学院専門法務研究科は「生きている一人ひとりのために」という理念のもと「心」ある法曹の育成を社会的使命としております。2004年の設立当初は、小規模ロースクールでした(当時の1学年定員50名は設立された全74ロースクール中39位で定員総数に占める割合は0.86%)。しかし、それから20年が経過し、ロースクール全体が厳しい競争にさらされた結果、本研究科の1学年定員40名という規模は、募集を継続している全国34のロースクール中、16位です(定員総数に占める割合は1.82%と倍加)。大規模ではないにせよ、小規模とも言い難い、微妙な立ち位置となってきております。
 とはいえ、本研究科は、あくまで「一人ひとり」のための小規模ロースクールであるとの認識の下、30代から60代まででバランスよく構成された専任教員20名がきめの細かい教育を実践しています。また、千葉大学法政経学部に所属する兼担教員のほか、本研究科を修了した若手弁護士も学生目線に立ち、親身な指導を行っています。法曹養成に特化した教育を担うプロフェッショナル・スクールとして、理論と実務との架橋を意識した高い水準の学修機会の提供に日々努めておりますが、同時に、難解かつ複雑な法的問題こそ基本が大切であるとの認識に立ち、基礎力を重視している点に、本研究科のカリキュラム上の特徴があります。
 現在、われわれの社会は、ますます激しい格差や分断が生じているように思われます。コロナ禍がその主因と見られたこともありましたが、コロナ禍が終息したはずの現在も解消の見通しが立ちません。コロナ禍はオンライン上のコミュニケーションの発展には寄与しましたが、かえって、経済的に、あるいは精神的に追い詰められた人たちがいっそう可視化されにくくなりました。人々が困窮するプロセスは見えぬまま、その悲惨な結末として、いじめ、児童虐待等、いたましい事件や人権侵害等が後を絶たない状況が続いています。皆さんのなかにも、われわれの社会のかような閉塞状況に、心を痛めたり、不安に思われたりする方もおられるでしょう。
 このような時代だからこそ、幅広い視野と洞察力を備え、多様な価値観を尊重できる法律家が期待されています。もちろん、法律だけで問題がすべて解決できるわけではありませんが、そういう限界を冷静に見極めつつ、法律を駆使してなしうる最善の解決を柔軟に構想できる能力は不可欠です。そうした能力を備えつつ、しなやかで強い心、優しい心をもって、追い詰められた「一人ひとり」に寄り添える法律家を目指してもらいたいと思います。そうした営為の積み重ねによって社会の発展や成熟に寄与することが、冒頭の「生きている一人ひとりのために」という一文に込められたわれわれの願いであり理念です。
 法曹への道のりは、けっして平坦なものではないですが、チャレンジする価値のある専門職であることはいうまでもありません。幸いなことに、本研究科は、すでに 300 名以上の司法試験合格者を輩出してきました。冒頭お示ししたとおり、本研究科の規模が相対的には大きくなったことも、この実績に裏打ちされています。そして、修了生は、弁護士、裁判官、検察官として全国各地で活躍しています。千葉県が東京都に隣接することもあって、大手法律事務所に所属する弁護士も多いですし、企業内弁護士も少なくないですが、法律過疎地域で活動する弁護士もいます。皆それぞれ「生きている一人ひとりのために」という言葉を胸に秘め、法曹としての責務を全うしているといってよいでしょう。
 本研究科における履修課程も、他の大学院と同じようにハードなものですが、修了生の多くが本研究科で研鑽を積んだ、かけがえのない日々が有益であったと感じているようです。本研究科で得た友人、先輩、恩師は皆さんにとって一生の財産になるはずです。本研究科には、互いに励まし合い、助け合いながら一丸となって目標に進むという良き伝統が受け継がれており、これこそが本研究科の一番の強みといえます。
 皆さんも、私たちとともに「生きている一人ひとりのために、生活者の視点を忘れない『心』ある法律家」への一歩を踏み出しましょう。



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